健診結果を正しく理解し、健康管理に役立てましょう

健診結果は、心身の健康を保つために役立つ大切な情報です。
結果は「異常なし」「要経過観察」「要精密検査」「要治療」などに分類されるため、それぞれの意味を正しく理解し、健康管理に活かすことが重要です。
診断結果の種類
異常なし
「異常なし」の場合は、検査結果の数値が基準値の範囲内にあり、臓器や身体機能に問題がないことを示しています。
要経過観察・要再検査
「要経過観察・要再検査」の場合は、検査結果の数値が基準値から外れているものの、ただちに治療が必要な状態ではないことを示しています。
この段階では、病気の発症を防ぐために、食事や生活習慣を見直すことが大切です。当院では、健診結果をもとに生活改善のアドバイスも行っていますので、お気軽にご相談ください。
要精密検査
「要精密検査」の場合は、検査結果の数値が基準値から外れており、現時点では明確な疾患の有無を判断できないため、さらに詳しい検査によって原因を確認する必要があることを示しています。
そのため、できるだけ早めに医療機関を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。
ただし、数値の異常が必ずしも病気を意味するわけではなく、追加検査の結果、特に問題が見つからない場合もありますので、過度に心配しすぎる必要はありません。
当院では、二次検査や精密検査のご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
要治療
「要治療」の場合は、検査結果の数値に明らかな異常が認められ、早期に治療を開始する必要があることを示しています。
できるだけ早めに医療機関を受診されることをおすすめします。
検査項目と考えられる疾患
健康診断では、各検査項目ごとに特定の疾患リスクを把握することができます。検査結果に異常値が見られた場合、それがどのような疾患と関連している可能性があるのかを、以下にわかりやすく解説します。
血圧

血圧検査は、血管にかかる圧力を測定することで、循環器系の健康状態を把握するための重要な検査です。一般的に、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の状態を「高血圧」といいます。
これらの数値が基準値を超えている場合、高血圧と判定されます。高血圧症と診断された場合、血管に継続的な負担がかかることによって、動脈硬化が進行し、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞など、重篤な疾患を引き起こすリスクが高まります。
そのため、早期の対策が非常に重要です。また、「白衣高血圧」と呼ばれる現象にも注意が必要です。
これは、医療機関で測定すると血圧が一時的に高くなる状態で、自宅での測定値と大きく異なることがあります。日常的にご自身で測定した血圧が基準内で安定している場合は、その記録を健診時にご持参いただくことで、より正確な判断につながります。
メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加えて、血圧・血糖・脂質のうち複数の項目に異常がみられる状態を指します。
内臓脂肪型肥満は、腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合に該当します。これに加え、以下のいずれか2項目以上に当てはまると「メタボリックシンドローム」と判定されます。
- 血圧:収縮期血圧が130mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上
- 血糖:空腹時血糖が110mg/dL以上
- 脂質:中性脂肪が150mg/dL以上、またはHDLコレステロールが40mg/dL未満
健康診断では、これらの項目をもとに「基準該当」「予備軍該当」「非該当」「判定不能」の4つに分類されます。メタボリックシンドロームになると、内臓脂肪の蓄積により動脈硬化が進みやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。
ただし、「基準該当」や「予備軍該当」と判定された場合でも、食事・運動・禁煙など生活習慣を見直すことで、発症や重症化を予防することが可能です。
コレステロール
コレステロールの検査は、血液検査によって行います。この検査では、動脈硬化のリスクを評価するために、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。
LDLコレステロールの値が高いと血管に脂肪がたまりやすくなり、動脈硬化の進行につながります。
一方、HDLコレステロールは血管内の余分な脂質を回収する働きがあるため、数値が低い場合は動脈硬化のリスクが高まります。脂質異常症とは、以下のいずれかに該当する状態を指します。
- LDLコレステロールが140mg/dL以上
- HDLコレステロールが40mg/dL未満
- 中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上
これらの数値が基準を外れている場合、血管に負担がかかりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。
脂質異常症を予防・改善するためには、バランスの取れた食事や定期的な運動、禁煙などの生活習慣の見直しが重要です。必要に応じて医師の指導のもとで治療を行うことも検討しましょう。
血糖値
血糖値の検査は、血液検査によって行われます。この検査では、血液中のブドウ糖の濃度を測定し、糖尿病のリスクや血糖コントロールの状態を確認します。
糖尿病は、高血糖の状態が続くことで血管に負担をかけ、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクを高めます。さらに、腎機能障害や視力障害、足の壊死といった合併症を引き起こすこともあり、重症化すると透析が必要になる場合もあります。
糖尿病は自覚症状が出にくく、気づかないうちに進行するため、健診で異常が見られた場合は早めに医療機関へ相談することが大切です。血糖値に関する基準値の目安は以下の通りです。
- 空腹時血糖値:110mg/dL以上
- HbA1c(ヘモグロビンA1c):6.0%以上(NGSP値)
これらの数値に当てはまる場合、糖尿病またはその予備群が疑われます。
尿酸値

尿酸値の検査は、血液検査によって行います。この検査では、血液中の尿酸の濃度を測定し、高尿酸血症や痛風のリスクを評価します。尿酸は、プリン体が体内で分解されることで生成され、ビールなどのアルコール類や肉・内臓類に多く含まれるプリン体を過剰に摂取すると尿酸値が上がりやすくなります。
尿酸値が高い状態が続くと、腎臓や血管に負担がかかり、尿酸結晶が関節に沈着して痛風を引き起こす可能性があります。
また、腎機能障害や高血圧との関係も指摘されています。尿酸値を適正に保つためには、食事の見直しや適度な運動など、継続的な生活習慣の改善が重要です。尿酸値の基準値(成人)は以下の通りです。
- 男性:7.0mg/dL以下
- 女性:6.0mg/dL以下(目安)
これらの数値を超える場合は「高尿酸血症」とされ、必要に応じて医師による指導や治療が推奨されます。
肝機能
肝機能とは、肝臓が正常に働いているかを確認するための指標で、血液検査によってALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの酵素値を測定します。ALTとASTは肝臓の細胞に多く含まれ、数値が高いと肝障害が疑われます。
γ-GTPは、アルコールや薬剤による肝障害や胆道系の異常を反映しやすい項目です。肝機能の基準値の目安は以下の通りです。
- ALT(GPT):30 IU/L以下
- AST(GOT):30 IU/L以下
- γ-GTP:男性 50 IU/L以下、女性 32 IU/L以下
これらの数値が基準を超える場合、肝炎や脂肪肝、アルコール性肝障害などの可能性があります。
肝機能に異常があると、血液の流れが悪くなり、食道や胃の静脈瘤を引き起こすことがあります。静脈瘤が破裂すると命に関わる危険もあるため、異常を指摘された場合は早めに医療機関を受診してください。
貧血

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビン(血色素)が不足し、全身に十分な酸素を運べなくなっている状態を指します。健康診断では、血液検査によりヘモグロビン濃度、ヘマトクリット(赤血球が血液中に占める割合)、赤血球数などを測定し、貧血の有無を判定します。
貧血の主な原因には、鉄分不足による鉄欠乏性貧血のほか、消化管からの出血や慢性疾患、栄養不良などがあり、特に中高年では消化管出血の可能性にも注意が必要です。
健診で貧血と判定された場合は、必要に応じて内視鏡検査などを行い、出血の有無を確認します。ヘモグロビン濃度の基準値は、男性で13.0g/dL未満、女性で12.0g/dL未満の場合に貧血とされます。
また、ヘマトクリット値は、男性で39%未満、女性で36%未満が基準を下回ると判断されます。これらの数値に異常がみられる場合は、早期に原因を特定し、必要に応じて治療や栄養改善を行うことが重要です。
尿検査
尿検査では、尿中に含まれる蛋白、赤血球(潜血)、ブドウ糖の値を測定し、腎臓や尿路、代謝機能の異常がないかを調べます。これらの数値が基準値を上回る場合、尿路結石、尿路感染症、腎炎、腎機能障害、膀胱や腎臓の腫瘍、糖尿病などの疾患が疑われます。
とくに、激しい腹痛や血尿などの自覚症状がある場合は、早急に医療機関で精密検査を受けることが必要です。一方で、尿検査は食事や水分摂取、運動などの影響を受けやすいため、健診で異常値が出ても、再検査の結果で異常が見つからないこともあります。
ただし、たとえ自覚症状がなくても、健康診断や人間ドックで尿検査に異常があった場合は、重大な疾患が隠れていないかを確認するためにも、医師の指示に従って精密検査を受けるようにしましょう。
心電図

心電図検査では、心臓の電気的な活動を記録することで、狭心症、不整脈、心肥大、心筋梗塞などの心疾患の兆候を把握することができます。これらの疾患を正確に診断するためには、心電図の結果に加えて、医師による診察や問診が必要です。
検査結果で「要観察」や「要精密検査」と判定された場合は、症状がなくても放置せず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。早期の対応が重篤な心疾患の予防につながります。
便潜血
便潜血検査とは、大腸がんなどの消化管の病気による出血の有無を調べるために行う検査です。この検査では、肉眼では確認できないほど微量の血液が便の中に含まれているかどうかを調べます。
検査結果が陽性と判定された場合は、消化管のどこかで出血している可能性があるため、原因を特定するために大腸内視鏡(大腸カメラ)検査などの二次検査が必要となります。
当院では、できるだけ苦痛の少ない内視鏡検査を実施しています。便潜血陽性と判定された方は、早めにご相談ください。早期の精密検査が、大腸がんなどの重大な疾患の予防・早期発見につながります。